国際会議通訳 グレース美幸さん
千葉大学看護学部、カリフォルニア大学サンフランシスコ校看護学部修士課程卒。サイエンスや技術系分野の同時・逐次通訳を得意とし、IT分野ではエンジニアと勘違いされることもある。通信衛星 N-STARや気象衛星ひまわりのプログラム通訳の他、NASAの地球観測プログラムASTERを1991年から担当し、2018年にはNASAから感謝状が授与される。故スティーブ・ジョブズ氏などシリコンバレーのトップ経営者の通訳や、故日野原重明氏の米国講演の同時通訳などを担当した。
「Transcriptionのツールを以前から探していましたが、Otterは期待をはるかに超えるレベルでした」
そう語るグレースさんは、サンフランシスコ郊外に在住する国際会議通訳です。シリコンバレー企業の会議通訳や、NASAのプロジェクトメンバーなど、豊富な経験と知識をもち 、主にIT・情報通信分野を専門とした通訳・翻訳・字幕制作などを行っています。
「2020年の春ごろだったと思います。近隣に住むジャーナリストから“これ知ってる?”という感じでOtterを薦められました。最初に使った時の印象は、これくらいレベルの高いツールがPCやスマホで無料で使えるとは、技術革新が進んだなと驚きました。
Otterに音声を聞かせると、1秒未満で書き起こしを始め、そこから最後まで、ほぼリアルタイムで英語を書き取ってくれました。そのスピードが圧倒的に素晴らしく、音声認識・書き起こしの精度も十分にあると感じました。この程度はできてくれるといいな、と私が望んでいたレベルをOtterは、はるかに超えていましたね」
グレースさんは通訳の仕事の傍ら、グローバルに活躍するビジネスパーソンのための英語勉強会を開いたり個人指導を行っています。上級レベルの生徒に、スピーチやプレゼンテーションのスキルアップのサポートを行う場面でOtterが活躍してくれるといいます。
「英語がかなり流暢に話せるようになったし、自分でもそう思っていらっしゃる、そういう方のスピーチやプレゼンテーションをOtterに聞かせ、書き起こしをしてもらいます。自分の話したことを正確に記憶することはできませんが、Otterが書き残してくれることで自己添削が容易になります。細かな修正点をいくつも発見でき、スキル向上に役立っています」
また、勉強会ではOtterを発音の指導に利用することもあります。Otterは、話者の発音が間違っていたり、不明瞭だった場合、その単語や文を正しく認識できないことがあります。それを利用し、“Otterに聴き取ってもらえるレベル”をひとつの目安にして、発音のトレーニングをしていくのです。
「発音のチェックでは、実はひとつ 困っていることがあるのです。たとえば 、生徒本人はBeautifullyの語尾を“ry”の方で発音してしまったのに、賢いOtterは文脈から判断し、“ly”と正しいスペルで表示してくれるのです。すると、生徒が自分の発音は問題がないと思い込んでしまいます」
また、グレースさんが最もOtterが役に立つアシスタントだと感じるのは、動画の字幕制作に活用する時だといいます。
「従来の字幕の作り方は2種類。速記者に依頼し、動画から話者の言葉を英文で起こしてもらい、それを私が翻訳し、日本語の字幕として仕上げるというやり方が一つ。もう一つ は、私が動画を見ながら通訳して文を書き、それを仕上げるという方法でした。速記者に依頼するのは時間と費用がかかるし、動画を同時通訳して訳文を起こすのも非常に手間がかかります。それが今では、Otterが英文書き起こしまでを素早く終えてくれるので、私は翻訳と仕上げに集中できます。
Otterのおかげで字幕制作の時間とコストが大きく削減できました」
要約や翻訳を作成するプロセスでOtterの書き起こしが大いに役立つとグレースさんはいいます。
「一方で、より高い完成度を問われる書き起こし文をつくるには、Otterの起こした文をもとに何度か清書をしなければなりません。というのは、人には言い直しや言い間違いがつきものなので、それを整理して、意味のある文として明確に記録するには、個々の文を見ながら判断する必要があります。そこはまだまだ私たちの熟練スキルが不可欠な領域ですね」
グレースさんは、最近、書き起こしや自動翻訳など、通訳の仕事に役立つさまざまなツールが日進月歩の進化を遂げていると感じています。
「私たち通訳の世界にもAI翻訳の時代が到来しています。これから通訳者・翻訳者を目指す人はOtterのような賢いAIの力を借りながら、機械にはできない自分だけのスキルを磨いていくことが大切になるでしょう」